有機栽培とは?簡単に分かりやすく解説|無農薬・オーガニックとの違いやメリット・デメリット

最近よく聞く「有機」という言葉。

「安心できる」「おいしそう」。
そんなイメージの反面で「少し価格が高い」「取り扱っているところが少ない」など手が出しにくいという声も。

有機栽培についての基本を知って、有機野菜を購入時の選択肢にしてくださいね。

「有機栽培」とは?簡単に解説

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いま野菜を育てる方法は、大きく3つあります。

1.一般慣行栽培
化学合成農薬や化学肥料などを利用して栽培すること。
使用してもよい農薬の種類や回数は法律で定められおり、基準となる慣行レベルは地方公共団体が策定しています。

2.特別栽培
栽培期間中に、化学合成農薬や化学肥料を、一般的な栽培法で育てた同じ作物の50%以下にしたもの。
お米や野菜のパッケージの「特別栽培」の表示が目印です。

3.有機栽培

農林水産省HPによると、このように記載されています。

「有機農業の推進に関する法律」による有機農業の定義は以下のとおりです。

[1]化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない 
[2]遺伝子組み換え技術を利用しない 
[3]農業生産に由来する環境への負荷をできるだけ低減する

農業生産の方法を用いて行われる農業です。

ここから、3つの定義をひとつずつ説明していきます。

「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない」

肥料には、大まかに「有機質肥料」と「化学肥料」の2種類があります。
有機質肥料は薬品処理等の加工をしていない自然由来の肥料ですが、化学肥料は工場で薬品処理したりして、使いやすいように加工された肥料です。

つまり、動物のふんや植物を発酵させて、肥料として用いるものが有機質肥料。
化学加工しないので、工場から出る二酸化炭素の排出低減にもなっています。

次に農薬。
化学的に合成された「化学合成農薬」のほか、生き物を使った「生物農薬」など、その種類はさまざま。

除虫菊から抽出したものや、じゃがいものデンプンから作ったものなど、植物由来で有機栽培でも使える農薬もあるんです。

農薬は「農薬取締法」という法律で、その種類や使用上限が定められており、国の考えでは日本で流通している野菜に使われる農薬は安全であるとされています。

ただし、使用後にその危険性が明らかになることも多く、100%安全ですとはいい切れないのも事実です。

たとえば、日本で広く使用されている「ネオニコチノイド系農薬」は、その毒性が人の健康やミツバチ、生態系に影響を与えるとして、欧州連合(EU)をはじめとする諸外国では使用の全面禁止や規制強化の動きが進行中。

アイチョイスでもできるだけ使用しない栽培方法を推奨しています。


「遺伝子組み換え技術を利用しない」

遺伝子組み換え技術といえば、有名なのが「青いバラ」。

バラには青色を作る遺伝子がなかったため、パンジーの青色遺伝子を切り取って、バラの遺伝子に入れ込み、「青いバラ」が誕生しました。

わたしたちが口にする「農産物」でも同様に、必要な遺伝子を切り取って、別の個体に取り込むことが可能です。
いまでは、遺伝子組み換え農産物が、国内外問わず流通するようになりました。

でも安全性が気になりますよね。
遺伝子組み換え技術の安全性はグレーゾーンの部分がまだあり、「今後も検証が必要」と主張する人が多くいます。

「長期間食べ続けると子や孫の代まで影響する可能性があるのでは」との懸念も。

遺伝子組み換え農産物が、従来の農産物と交配したら・・・。
従来の遺伝子が置き換わってしまい、結果、自然環境の破壊につながりかねません。

日本の遺伝子組み換え表示対象作物はこの9作物。

大豆(枝豆および大豆もやしを含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、 パパイヤ、からしなです。

アイチョイスではこれらを原料に使っている食品すべてについて調べ、「不使用」か「主原料不使用」か「不分別」を表示しています。


「農業生産に由来する環境への負担をできるだけ低減する」

化学肥料は、使いすぎると土壌が劣化してしまうリスクがあるとご存じでしょうか。

有機栽培は、化学肥料を使わないので土壌を守ることや、溶け出した肥料によって川の水が汚れることを防ぐのも可能です。

化学肥料は工場で作る際、CO2を排出します。それゆえ、生産量が減ればCO2削減にもつながります。

ほかにも、先ほどお伝えしたように遺伝子組み換え技術を利用しないので、自然に近い形で農業を行え、生物多様性を守ることにも役立つのです。

有機栽培は「安全でおいしい野菜」をイメージする人が多いと思いますが、それだけではなく「自然の力を生かした環境にやさしい農業」こそが、その特徴といえるでしょう。

有機栽培と無農薬栽培とオーガニック栽培の違いとは?

有機栽培という言葉のほかに、無農薬栽培やオーガニック栽培という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
これらの言葉の意味や違いはご存じですか?

「有機栽培よりオーガニックの方がなんとなくよさそう」
「無農薬栽培と有機栽培は何がちがうの?」

とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。

それぞれの言葉の意味とその違いについて、ご紹介します。
知っていたという方もぜひおさらいしてみてくださいね!

有機栽培とオーガニック栽培の違い

有機栽培とオーガニックは、基本的にはほとんど同じ意味で使われています。

日本でよく使われる有機栽培とは、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を使わず、環境にやさしい栽培方法のこと。
有機栽培で生産した農産物を「有機農産物」として販売するには、国で定められた「有機JAS規格」基準を満たす必要があります。

一方、主に欧米で一般的なオーガニック栽培は、有機栽培と同じように有機農法を意味しますが、国や組織によって異なる基準が存在しています。

有機野菜と無農薬野菜の違い

有機野菜に対して、無農薬野菜とは生産期間中に農薬を使用しない栽培方法を用いて栽培した野菜のことをいいます。

無農薬栽培の農産物には、まったく農薬を含まないことを示す厳格な基準や、それを認定する機関がないため、現在では「無農薬」と表示することが禁止されてるのです。

これは、無農薬として育てても、実際には土壌に農薬が残っていたり、近隣の畑から飛散してくることも考えられるため。

一点注意すべきなのが、有機栽培では天然原料を使用した一部の農薬は使用を認められています。
有機栽培は農薬を使っていないと勘違いされがちなので、覚えておきましょう。

有機栽培のメリット・デメリット

有機栽培のメリットとデメリットは何があるでしょうか?

有機栽培のメリットは、農薬や化学肥料の使用が厳しく制限されているので、小さなお子さんがいる家庭でも安心して食べられること。

また、野菜本来の味を楽しむことができたり、生態系を守ることに貢献ができる点もメリットといえるでしょう。
生産者としても、慣行栽培の農産物との差別化ができ、高い付加価値を付けられます。

対してデメリットの多くは、生産者にあるといえます。
収穫量が少なく、除草など手間がかかるため、農産物の販売価格が慣行栽培のものと比べて高くなってしまうのです。

ここで有機栽培の疑問にお答えします!

有機栽培とはどういう定義ですか?

有機栽培とは、化学肥料や農薬、遺伝子組み換えに頼らずに農作物を栽培する方法のことです。

有機栽培の欠点は何ですか?

有機栽培の欠点は、農産物の収量が制限され、販売価格が高くなってしまうこと。
他にも、除草などにかかる手間や、病害虫への抵抗力が弱いなどのリスクがあります。

有機とオーガニックの違いは何ですか?

有機栽培は日本でよく使われる言葉で、化学肥料や農薬、遺伝子組み換えに頼らず農作物を栽培する方法のこと。
有機農産物と認められるには、国で定められた有機JAS規格という基準を満たす必要があります。

対してオーガニックは、主に欧米で一般的に使われる言葉。
有機栽培と同じ意味ですが、国や組織によって異なる基準が存在しています。

有機農法とはどのような方法ですか?

有機農法とは、化学的に合成された肥料・農薬や遺伝子組み換え技術を使わずに、環境への負荷をできる限りかけない方法で行われる農業のことです。

日本で有機栽培をしている面積の割合は?

日本全体の0.3%の農地でしか有機栽培は行われていません。
有機先進国のイタリアでは16%と国によってかなり差があるのが現状です。

アメリカや中国は面積で見たら多いのですが、割合で見ると多くはないですね。

なぜ取り組む人が少ないの?

農林水産省が生産者を対象に行ったアンケートでは、有機農業の面積を縮小したい、現状維持と答えた理由として、「栽培管理の手間がかかる」「収穫量が上がらない」等が挙げられたそうです。

このような現状の日本ですが、有機栽培に取り組んでいる農家さんは「よりよい農産物を食べてもらいたい」「生物多様性を守りたい」という熱い想いで取り組んでいます。

有機栽培で一番多く栽培されているのは?

日本の食文化の中心である米がやはり1位。
お米なら、毎日の食事で取りいれやすいと思います。

わたしたちが良く飲む、「お茶」。
残念ながら、なかなか普及していないのが現状です。

そして「大豆」。
味噌、豆腐、納豆など、日本にとって身近な調味料の原料になっていますが、あまり栽培されていません。

世界の有機認証マーク

これまで日本国内の有機栽培とその現状について解説しました。

日本で有機JAS規格が定められているように、世界中には有機栽培について地域や組織によって異なる基準が存在しています。

ここでは世界の代表的な有機認証マークのいくつかをご紹介しましょう。
さまざまな有機認証マークとその基準を覚えておくことによって、海外へ行ったときや輸入品を購入するときにオーガニック商品を選びやすくなりますよ。

アメリカ【USDAオーガニック認証】

USDAオーガニック認証とは、アメリカ合衆国農務省(United States Department of Agriculture)による認証制度です。

全米オーガニックプログラム(NOP)制度による、製品の栽培・加工・取り扱いについての厳しい基準を設けています。
アメリカ国内では、第三者機関からの認定を受けることで、USDAオーガニック認証マークが使用可能に。

20141月から、日本とアメリカとの間では有機農産物の同等性が認められたことを受けて、互いの国の認証を受けることなく輸出・輸入ができるようになりました。

世界の有機食品の売上が年々増加している中、アメリカは世界1の市場規模を誇っています。

EU【ユーロリーフ オーガニック認証】

ユーロリーフ認証は、EUの政策執行機関「欧州委員会(Europian Commission)」が定めるオーガニック農業規則に従って生産された農産物であることを証明するもの。

EU加盟国では、商品に「オーガニック」と表示して販売するために欠かせない認証です。

特徴的なユーロマークは、欧州旗の象徴でもある12個の星と、葉の形、緑色を組み合わせたものなのだとか。

EUオーガニック認証の対象となるのは種子や農産物、農産加工品、お肉、飼料など。
有機栽培のカテゴリでは、製品に95%の有機成分が含まれている場合のみ、オーガニックロゴが使用可能です。

他にも、遺伝子組み換え技術の使用禁止、化学肥料・除草剤・農薬使用の制限などのルールが設けられています。
環境保護の促進や生物多様性の保全、消費者の信頼確保が目的です。

オーストラリア【ACOオーガニック認証】

オーストラリアの農業水資源省によって承認されたACO(Australian Certified Organic)は、オーガニックおよび有機農法のひとつである、バイオダイナミック農法によって生産された農産物を認証するオーストラリア最大の機関です。

「bud(つぼみ)」と呼ばれるロゴは、オーストラリアのオーガニック業界を代表するロゴとされています。

認証されるには、95%以上が認定されたオーガニック原料であり、残り5%についても基準に沿った自然由来の成分でなければなりません。

また、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術はもちろん使用せずに栽培・加工されたのもに限ります。
その他、ヴィーガンへの配慮や動物実験を行わないことなど、さまざまな基準があります。

アイチョイスで有機野菜を出荷している生産者たち

大雪を囲む会

大雪を囲む会代表 一戸義則さん

2010年に北海道で立ち上がった大雪を囲む会は、有機農産物づくりを行う生産者グループ。
2024年現在、8人のメンバーが参加しており、全員が有機JAS認証を受けています。

圃場は、有機栽培の生産者グループとしては大規模な180haです。
この広大な土地を化学合成農薬や化学肥料を使わずに管理し、生産者ごとの特性に合わせて自家製のたい肥づくりを実施。

生産者グループを作ることで生産量を確保し、安全でおいしい有機農産物を広めていくことを目的として活動されています。

山三レンコン

左から三男・鐘寛さん、長男・真弘さん、次男・泰寛さん。

愛知県愛西市にある山三レンコンは、稀少な有機れんこんを栽培。
親子3代で生産を続け、現在は仲良し山田三兄弟が中心となって運営しています。

愛西市は、れんこん栽培に適した豊かな土壌と水を兼ね備えたれんこんの名産地です。

山三レンコンは「皆さんにおいしいれんこんを沢山食べてほしいから」と農薬を使わずに手間をかけて栽培に取り組んでいます。

2002年には有機JAS認証を取得。
愛知県のれんこん農家の中で、有機JAS認証のれんこんを育てているのは、山三レンコンさんのみだそう(2023年8月現在)。

くまもと有機の会

くまもと有機の会 森田さん(左)と手嶋さん(右)

くまもと有機の会とは、生産者と消費者をつなぐ専門機関として、熊本県で発足された生産者グループ。

「自然と共に」を基本とし、露地栽培(一部雨よけ使用)で年間100種類もの有機・無農薬野菜を栽培しています。

熊本県ほぼ全域に生産地が点在しており、時期によって産地を変えながら集荷することで、年間を通して安定的に野菜を供給しているのです。

くまもと有機の会が重視するのは、「生産者と消費者の顔が見える関係性」。
産地交流や工場見学、料理教室などの交流会を開くなど、生産者と消費者をつなぐ活動を精力的に行っている生産者グループです。

さかもとふるーつ

さかもとふるーつ代表取締役 坂本侑平さん

さかもとふるーつは、有機温州みかんを栽培する生産者さんです。

生産者の高齢化により、耕作放棄の増加が年々進む熊本県玉名市天水町。
その現状を食い止めるため、代表取締役の坂本さんは毎年必ず放棄された畑を購入し、圃場を広げて規模を拡大してきました。

2002年にはJAS認証を取得し、 2006年にはオーガニック認証を取得。
2024年現在では年間600トンに上る有機栽培のみかんを生産・販売しています。

温暖な気候と有明海からの海風を浴びて育てられたさかもとふるーつの有機温州みかんは、甘みと酸味のバランスのよさとコクの深さが特徴です。

TOGO GREEN WORKS

TOGO GREEN WORKS 松田洋幸(まつだひろゆき)さん(中央)

愛知県東郷町にあるTOGO GREEN WORKSは、町内で唯一有機JAS認定を受けた農家さんです。
主に小松菜・ほうれん草・水菜・かぶ等の冬野菜のほか、きゅうり・ピーマン・にんじんを生産。

TOGO GREEN WORKSでは、11棟のハウス25a、野外の畑(露地栽培)120aを組み合わせて、一年中出荷できるように計画を立てています。

合計でテニスコート55面分にも及ぶ圃場の管理は、ご本人・奥様・パートさんの4名で行っているのだそう。

農福連携の一環として、栽培の終わったきゅうりの片づけ作業などを依頼。
ほかにも有機野菜を広めるため、子どもたちに向けて収穫体験を開催するなど、地域への貢献もされています。

有機栽培の野菜を食べて農家を応援しよう!

有機栽培を広げていくために、わたしたちにできることは、まずは「有機栽培について知る」ことだと思います。

アイチョイスでは、今後も有機野菜についての情報を発信していきます。
カタログ等で見かけたときには、この話を思い出しながら読んでもらえると嬉しいです。

政府は2050年までに有機農業の取り組み面積を25%にする目標を掲げています。
環境にやさしい有機栽培が広がるようわたしたちも応援していきましょう!

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編集担当もえぞー

2022年アイチョイス入協、30代、夫と2人暮らし。
家庭菜園歴8年目で現在、有機栽培に挑戦中です!
前職では農家さんを相手に野菜の栽培指導をしていました。
ナッツは塩茹でした落花生が大好き♪