持続可能な社会へ。国が掲げる「みどりの食料システム戦略」

世界でオーガニック市場が拡大し、有機農業取組面積は20年前の約5倍に。
アイチョイスでも、有機野菜や化学農薬・化学肥料不使用の農産物の取り扱いを増やしています。

2021年5月、有機農業において後進国であった日本も、「みどりの食料システム戦略」を策定し、有機農業の推進や化学農薬・肥料の削減へと舵を切りました。

「みどりの食料システム戦略」とは

生産力強化や持続可能性の向上を目指した、農業・林業・水産業における食料生産の方針です。
食料生産における、調達・生産・加工・流通・消費のすべての段階が対象としています。

その中身は、農業・林業・水産業に伴う温室効果ガスや、化石燃料由来の肥料の使用量を減らすなど、環境負荷の低減策が中心。

その他、水産業において天然種苗(※)の採捕量を減らすなど、生物多様性を守る取り組みも含まれます。 

農業・林業・水産業が複雑に絡み合うものですが、今回は農業にスポットをあてて解説します。

※水産分野において、人間の管理下ではなく自然環境で発生した魚介類の稚仔や海藻の幼体のこと。受精卵あるいは胞子を含む場合もある。

アイチョイスの姿勢

「みどりの食料システム戦略」には有機農業の拡大や、化学農薬・肥料の削減など、アイチョイスの取組みとリンクするものが多くあります。

一方で、農薬削減のために、ゲノム編集やRNA農薬(※)といった遺伝子操作技術を用いる恐れがあるなど、アイチョイスとして賛同できない内容も。

アイチョイスは、壊して良い遺伝子は一つもないと考えています。

特定の遺伝子の発現が抑制される現象(RNA干渉)を利用して害虫を駆除する新しいタイプの農薬。

参考:みどりの食料システム戦略(本体)(全体版)|農林水産省
index-10.pdf (maff.go.jp)(参照2023-9-23)

日本の農業の現状

気候変動による農産物の収量・品質の低下

地球温暖化による気候変動や自然災害の増加。
日本の平均気温は、現在100年あたり1.26℃上昇しています。

夏には熱中症アラートが毎日のように出され、ひと昔前は冷房無しで過ごしていた地域でさえ、今はクーラーが欠かせなくなっていますね。

こうした気候変動や自然災害は、農作物に多くの影響を与えます。

高温や乾燥が長期間続くと、農作物の収穫量の減少に加え、栄養価や味が低下することも。

例えば、葉物野菜は、高温下で苦味が強くなりがちです。
ブドウやリンゴなどの果物は、高温下で果皮の色が不均一になるため、外観が悪くなることもあります。

また、過度の降雨や台風は、穂が倒れたり実が落ちたりするため、稲などの穀物にも影響があります。

化学農薬および化学肥料による環境汚染

化学農薬や化学肥料を過剰に使うと、畑や田んぼだけでなく、川や地下水を通して土壌汚染などの問題を引き起こす可能性があります。

化学農薬による害虫駆除が進む中、その農薬に耐性のある害虫が発生する事態が起こるなど、生態系への影響も少なくありません。
なお、現在は化学肥料の原料の多くを海外に依存しています。

国内で調達できず輸送にエネルギーを使用することも、「みどりの食料システム戦略」においては大きな課題のひとつです。

また、土壌の改善には、化学肥料ではなく有機農業にも利用される堆肥(家畜の糞尿などを使用した肥料)が有効だとされています。

しかし、高齢化の流れの中で、堆肥の散布に労力がかかるという点から使用しない農家も。

さらに、堆肥の原料は地方に偏在していることが多く、品質管理が難しい、入手しずらい点も課題です。

「みどりの食料システム戦略」における農業分野の目標

様々な目標がありますが、その中で特にアイチョイスと関わりのある3つの目標をピックアップします。

2050年までに化学農薬の使用量(リスク換算)の50%低減

参考:『「みどりの食料システム戦略』KPI2030年目標の設定について|農林水産省
index-55.pdf (maff.go.jp)(参照2023-9-29)

単純に量を減らすというのではなく、2019年を基準とし、農薬による環境的・人体的リスクを考慮した「リスク換算」での数値を2030年に10%、2050年に50%低減するというものです。
その目標に向け、リスクの低い農薬の開発が進んでいます。

ミツバチなどに影響を及ぼすとされ世界的に問題となっている「ネオニコチノイド系農薬」の代替品の開発も、その一つ。

アイチョイスでは、既にネオニコチノイド系農薬不使用の農産物に対して、カタログに表示するなど、取組みを進めています。

2050年までに化学肥料使用量を30%低減

参考:『「みどりの食料システム戦略』KPI2030年目標の設定について|農林水産省
index-55.pdf (maff.go.jp)(参照2023-9-29)

2016年を基準に、化学肥料の使用量を2030年に20%、2050年に30%低減するというものです。
肥料の適正な使用や、堆肥(家畜の糞尿などを元にした肥料)の利用拡大を推進しています。

それに欠かせないのが、有機農業への移管。
有機農業では、有機質肥料や堆肥を使用するため、化学肥料の使用を大幅に削減することができます。

堆肥は扱いづらさが懸念されていますが、粒状に加工し容積を小さくしたペレット堆肥の活用を進めています。

2050年までに有機農業の取組面積を25%に拡大

参考:日本の有機農業の取組面積について(令和5年8月)|農林水産省
index-15.pdf (maff.go.jp)(参照2023-9-29)

耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%(100万ha)に拡大するという目標です。

2020年時点の日本の有機農業は、耕地面積当たりの有機JAS認証取得済み面積は約0.3%。
有機JAS認証を取得していない面積も含めても0.6%と、ごくわずかです。

欧州と比べると日本は有機農業が普及していません。

高温多湿で雑草や病害虫が発生しやすい日本の気候が、有機農業にとって大きな壁になっていることも理由の一つ。

有機農業に関する研究開発を積極的に行い、有機農業の生産性向上や品質改善を図っていく必要があります。

有機農業の拡大が循環型社会への大きなカギ

アイチョイスで扱う農産物は、約57%が「有機栽培レベル」(※)。
残りの半数も、農薬に頼らない栽培や、一般より農薬・化学肥料を減らしたものに限定しています。

「みどりの食料システム戦略」において、有機農業への移管が大きなカギとなるのは間違いありません。

有機農業や化学農薬・化学肥料を使わない栽培は、安心であるばかりか、いまの暮らしを持続するにも不可欠です。
記録的な大雨や台風などの自然災害が頻発するようになり、地球温暖化や気候変動は待ったなしの状況。

誰もが当事者として真剣に考え、行動に移さなければいけない時代になっています。

生産者だけでなく、私たち消費者が有機農業を広げるために出来ることは、有機農業を知る・そして購入して有機農業を支えることです。

アイチョイスでは、有機農産物の販売だけではなく、有機農業を広げる取組みとして、生き物との共存を目指すビオトープ米の栽培や、有機農家を育てる有機の学校の運営に携わっています。

アイチョイスではこれからも有機農業を発信し、広げていきますので、応援よろしくお願いします!

※有機認証を取得済み、または農薬・化学肥料不使用の確認が取れた農産物を指します。

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編集担当たまみ

みっくすなっつの編集長。2022年にアイチョイスに入協、30代、夫と2人暮らし。
編集長のクセに、実は料理は苦手。
商品部のバイヤーに聞いたアイチョイスの美味しいものを試すのが大好き。
最近家庭菜園を始めました。もえぞー先生に色々教わっています。
ナッツは香ばしいクルミが好き。