『コウノトリ育むお米』を栽培する兵庫県豊岡市に行ってみた!【Vol.1】

1971年、日本の空から姿を消した特別天然記念物「コウノトリ」。

兵庫県豊岡市では1992年からコウノトリの野生復帰事業に取り組んでいます。


1月下旬、私たちは豊岡市まで行き、コウノトリの歴史や『コウノトリ育むお米』の取り組みについて、取材しました。

『コウノトリ育むお米』とは

『コウノトリ育むお米(特別栽培)』

兵庫県北部・但馬(たじま)地域を中心に栽培している『コウノトリ育むお米』。

 

『コウノトリ育むお米』の栽培方法は有機JAS栽培・特別栽培(節減対象農薬不使用)・特別栽培(節減対象農薬7.5割減)の3つです。

そのうちアイチョイスでは、特別栽培(節減対象農薬7.5割減)【※】のお米を販売しています。

 

このお米はコウノトリの住みやすい環境を作りながらお米を育てることがテーマ。

特別栽培(節減対象農薬7.5割減)の場合、農薬を兵庫県の慣行栽培基準より7.5割以下に減らし、ネオニコチノイド系農薬は一切使用せず、さらに化学肥料も不使用です。

 

稲刈りあとに田んぼに水を張る「冬水田んぼ」の実施や、田んぼと水路をつなぐ「水田魚道」を設置。

 

お米づくりと同時に、コウノトリのエサとなるカエルやドジョウといった多くの生きものを一年中増やす工夫が行われているのです。

さらに、売り上げの一部はコウノトリの保護育成資金として寄付される仕組みづくりも。

コウノトリの生息場所となる湿地帯の設置や、生きものを増やすための環境整備に充てられています。

※アイチョイスでは『コウノトリ育むお米(特別栽培)』と表記して販売しています。

「JAたじま」ってどんなところ?

兵庫県北部の但馬地域を中心に事業を行う「たじま農業協同組合(以下、JAたじま」。

「たじまに生きる たじまを活かす」のもと、但馬の魅力を最大限に活かした農業振興に努めている農業協同組合です。

 

『コウノトリ育むお米』は、日本国内での販売だけでなく、海外にも輸出を開始。

アメリカ・オーストラリア・シンガポール・香港・ドバイ・スイス・オランダ・イギリスの8か国で販売されています。

 

多くの消費者に『コウノトリ育むお米』の取り組み・価値を広めようと販売促進に取り組んでいるのです。

兵庫県にある豊岡市立コウノトリ文化館に行ってみた!

豊岡市含む兵庫県北部の但馬(たじま)地域を中心に行われている取り組みがあります。

一度絶滅したコウノトリを野生復帰させる「コウノトリ野生復帰プロジェクト」です。

2024年1月下旬、私たちはコウノトリの野生復帰事業のために作られた施設「兵庫県立コウノトリの郷公園」へ行きました。

公園内にある「豊岡市立コウノトリ文化館」では、コウノトリ絶滅の歴史やプロジェクトの取り組みについて学べます。

コウノトリの絶滅に大きな影響を及ぼした“化学農薬”

もともと日本各地の空を飛んでいたコウノトリ。
1971年、日本最後の野生のコウノトリが兵庫県・豊岡市で絶滅しました。

 

コウノトリ絶滅の要因には乱獲や松の木の伐採による営巣木の減少、農業の近代化による田んぼや湿地帯の乾田化などがあります。

中でも、コウノトリの絶滅に大きな影響を及ぼしたのが「農薬の大量散布」です。

 

コウノトリは田んぼや湿地帯などの水辺でエサを捕まえ暮らしています。

しかし田んぼに農薬が大量に散布され、カエルやフナなどコウノトリのエサとなる生きものが死滅して数が急激に減っていきました。

コウノトリの数が減る前の豊岡市の様子

さらに当時の農薬に含まれていた、強い毒性を持つ「有機水銀」。
田んぼに生息する生きものの体内に蓄積され、毒に侵されていきました。

 

同時に、それらの生きものを食べるコウノトリの体内にも有機水銀が大量に蓄積され、その影響で繁殖機能を失ってしまったのです。

 

豊岡市では絶滅前からコウノトリを保護して人工繁殖に取り組んでいましたが、繁殖機能を失ったコウノトリから雛が産まれることはありませんでした。

コウノトリ野生復帰のかなめは「農業」

館長の友田さん

「いつか必ず空へ帰すから」。

そうコウノトリと約束を交わし、人工飼育に取り組み始めて24年目のこと。

 

ロシアから譲り受けたコウノトリの中からカップルが誕生し、ついに人工繁殖に成功。

2005年には5匹のコウノトリが野外放鳥され、野生復帰の第一歩を踏み出しました。

 

放鳥後、コウノトリの野生復帰をこれからも支えるために豊岡の人々が考えたのは「エサとなる生きものを田んぼに増やすこと」。

そこで兵庫県と豊岡市・JAたじま・生産者が三位一体となり、プロジェクトと同時に「生物多様性に配慮した農薬に頼らないお米づくり」を開始。

 

農業を変えたことで、2023年12月末時点で野生復帰したコウノトリの数は370羽にまで数を増やし続けています。

館内にある人工飼育スペース

『コウノトリ育むお米』を育てる冬の田んぼの様子は?

『コウノトリ育むお米』は但馬独自の「コウノトリ育む農法」によって栽培されています。

JAたじまの山口さんに「コウノトリ育む農法」を実践している冬の田んぼを見せてもらいました。

生きものたちを育む「冬水田んぼ」

祥雲寺地区の冬水田んぼ

公園に入ってすぐ、冬期間も田んぼに深く水を張る「冬水田んぼ」の景色が広がっていました。

 

ここは祥雲寺(しょううんじ)地区の「田んぼ」。

「コウノトリ育む農法」が始まったとされる場所です。

 

コウノトリ育む農法で1番重要なのは「水の管理」であり、冬水田んぼはその1つ。

 

稲刈り後に米ぬかなどの有機質肥料を混ぜて水を張ると、イトミミズがこれらを分解して「トロトロ層」と呼ばれる柔らかい泥の層が形成されます。

 

トロトロ層には小さな生きものが集まってくるため、コウノトリにとってはまさに「憩いの場」。

冬の間も水を張ることは、水辺をすみかとする多様な生きものを育むために重要なのです。

ほかにも、少しでも生きものを増やせるよう、田植えの1か月前から田んぼに水を張る「早期湛水(そうきたんすい)」も行っています。

 

雑草の駆除や水の管理、病害虫の駆除など手間のかかる「コウノトリ育む農法」。

生物多様性とお米づくりを両立させるのは決して簡単なことではなく、生産者の方々も日々試行錯誤しながらお米づくりに取り組んでいるのが現状です。

 

生産者さんの努力をムダにしないためにも、JAたじまでは営農指導や圃場の巡回を行いサポートしています。

 

そして多くの厳しい基準にクリアし、なおかつJAたじまに出荷されたお米のみが『コウノトリ育むお米』として販売されているのです。

営巣する野生のコウノトリ

祥雲寺地区で田んぼの近くを散策していると、営巣のために設置された人工巣塔でコウノトリの夫婦を発見!

貴重な野生のコウノトリの姿を、人工巣塔だけでも3羽ほど見られました。

生物多様性に恵まれた豊かな田んぼである証拠ですね◎

今までも、これからも。コウノトリとともに生きる豊岡市

今まで人生の中で一度もコウノトリを見る機会のなかった私。

今回、はじめてコウノトリを間近で見たとき、あまりの美しさに一瞬で目が奪われたのを思い出します。

 

どの田んぼにもコウノトリの姿が見え、豊岡市では日常の中でコウノトリが人間とともに暮らしているのだと感動しました。

「僕たちにとってはいつもそばにいる当たり前の存在なんですよ」と話す山口さん。

 

豊岡含む但馬地域の皆さまが「多様な生きものが存在する生命力溢れた自然環境」を創り上げてきたからこそ、コウノトリも豊岡の土地が大好きなのでしょうね。

 

次回、JAたじまの山口さんにインタビュー。

お楽しみにー!

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編集担当あかにー

2023年にアイチョイス入協。沖縄出身の30代。
恋人・フェレット3匹・ハムスター2匹・犬1匹・猫1匹の大家族。
製菓学校卒業後はパティシエやバリスタとして7年勤めていました。
最近はアイチョイスの食材を使ったお菓子づくりにハマり中。
ナッツは、カフェラテと相性抜群のアーモンドが好き。